[型番:WRKWOOKI250801]
【作品について】
いつ誰が建てたのか村人達は知りません。時計守は何代も続いていますが、そのいきさつについては全く言い継がれていないのです。
この時計台は高さ20メートル以上もあって、 しかも標高300メートル程の頂に建っているので 四方八方近隣の村々のどこからでも、 時間を知る事が出来ます。 時計台には時計守と言う、時を知らせる人が居ます。
時計守は年令や性別を問わず時計台が見える地域から、几帳面で人望が厚く責任感の強い人が選出されます。
選ばれたその人には 時計台のすぐ下に、 自宅が準備されます。時計守は一日に4回キッチリと6時間おきに針を合わせ、 時を知らせる鐘を鳴らさなければなりません。
時計台の内部には螺旋階段が有り、その階段は100段にも及びます。上り下りで200段余り、それを一日4往復しなければならないのです。そして体力が続く限り一生の仕事となるのです。
今この職務に就いている時計守は、9代目に当たります。40才の時に任され来年4月には80才になる高齢の男性です。最近は階段の上り下りに少し限界を感じ始めているらしく、ちょっと弱気な発言も聞こえて来ます。
名誉有るこの仕事を全うしなければとの思いと、体力の衰えの狭間で迷っているのかもしれません。 次の担い手にバトンを渡すタイミングが掴めないまま、いちにちいちにちが過ぎて行きますが、本人はきっとこの歴史をつなぐ仕事に携われる自分に誇りと喜びを噛みしめながら 生きているのに違いないのです。
一日でも長く勤まる事を願いつつ、毎日を送っているのだと思います。
【作家について】
若林薫
==============================
1980年インテリアデザイナーを経て、切り絵作家となる。
シンボルマーク、戦闘機スぺシェルマーキング、切手デザインなどを手がけ、作家として国内外にてこれまで数多くの個展、グループ展で作品を発表。現在は絵画講師として活動しながら油彩・水彩・切り絵・立体・アクリルと幅広い美術表現を続けている。
ナチュラル
レビュー・口コミ