2022/03/18
フリマアプリ「メルカリ」を運営する株式会社メルカリの人事担当である望月氏、大山氏をお招きし、Well-beingに関する各社の取り組みや個々の意識について語り合いました。
矢崎 香
株式会社丸井
EC事業部
大山 あつみ氏
株式会社メルカリ
HRBP(Organization Development担当)
望月 達也氏
株式会社メルカリ兼メルコイン
Talent & Culture
大浦 菜摘
株式会社丸井
自主事業部
森久保 雅美
株式会社丸井
中野マルイ
矢崎:昨年12月、望月さんより「Go Bold~思いっきり働ける環境づくり~」というオンラインでのセミナーを丸井グループ社員向けに開催していただきました。約160名の社員が参加し、反響を呼びました。 参加者からは「メルカリさまの社員が思いっきり働ける環境づくりのための取り組みが、先進的で大変勉強になった」という声が多く上がっています。
改めてセミナーの内容について簡単にお話いただけますか?
望月:セミナー「Go Bold~思いっきり働ける環境づくり~」では、メルカリの人事制度「merci box(以下:メルシーボックス)」について紹介しました。メルシーボックスでは産休・育休・介護休業の支援をはじめ、妊活支援、病児保育費支援、認可外保育園補助、万が一の時のセーフティライン(全社員に対して生命保険の加入)などの制度を整えています。
メルシーボックスは「社員のダウンサイドをカバーする」という考え方を大事にしています 。メルカリでは日々、社員から人事宛に「こういう制度を入れたらいいのでは」「ああいう制度を導入してほしい」とダイレクトメッセージがたくさん届きます。
たとえば、家賃補助やスポーツジム補助などの提案です。しかし、これらの提案には現状、メルシーボックスというかたちでは導入していくことはないと考えています。
なぜなら、制度導入の考え方のポイントは「どうしてもこれは個人では解決できない」 こと、つまり社員のダウンサイドをカバーするために支援することを大事にしているからです。
例えば、出産・育児・介護 のような誰にでも起こりうるライフイベントに対して、肉体的・精神的・経済的に追い込まれて自分ではどうしようもできないと、メルカリで働くことを諦めてしまう社員が出てしまうのであれば、それは会社にとっても社員にとっても非常に残念なことです。こうした「マイナス」を「ゼロ」にし、全員が同じフィールドに立って思いっきり働けるように制度を整えていくことが、メルシーボックスの役割だと考えています。
矢崎:実際にセミナーに参加した大浦さんはどう感じましたか?
大浦:すばらしい取り組みだと思いました。
特に「マイナス」を「ゼロ」にし、全員が同じフィールドに立って働けるようにするという考え方は、メルカリさまのバリューの一つでもある「Go Bold」に繋がっていると感じました。
今回のセミナーの中で、卵子凍結支援制度のお話が特に印象に残っています 。
望月:ありがとうございます。昨年、メルシーボックスでは新たな取り組みとして卵子凍結支援制度をトライアル導入しました。卵子凍結に関する費用を上限200万円までとして支援する制度です。
これまでメルシーボックスは、育児・介護を中心にした支援制度へ取り組んできました。
こちらの卵子凍結支援制度は、社会はこんなに変わっているのに対して妊娠のリミットは変わらず、女性のキャリア形成期と妊娠出産適齢期が被る可能性があるというデータから、女性のライフイベントの中で直面しうる課題の解決を支援するという主旨で、まずはトライアルとして導入しました。
メルカリは外国籍従業員が増えていることもあり、ベンチマーキングしているテクノロジー企業が多く集まるシリコンバレーでの卵子凍結の取組事例に着目しました。
メルカリで働く女性社員が、ライフとワークのどちらも犠牲にすることなく、活き活きと働きキャリアを構築していけるのであれば、会社にとっても大きなメリットがあると思います。
現在はトライアルというかたちで続けていますが、実際に社内にニーズがあり制度が活用されていることがわかれば、本格的に導入することを考えています。
森久保:丸井グループにも、自分だけでは解決できない課題や事情を抱えながら働いている人は多数存在しています。メルカリさまは、そういった方々がより活躍し、且つ誰もが後ろめたく働くことの無いよう、会社としてサポートしているのはすばらしいと感じました。単に抱えている課題に対してケアするのではなく、そうであっても誰もがフェアに働くための環境づくりをしていることがとても素敵ですね。
もし自分が何か課題を抱えていて、周囲のメンバーから必要以上に「大丈夫?」という特別扱いされているような声がけがあったら、なんとなく後ろめたさを感じてしまうかもしれません。
そんなときメルシーボックスのような、気軽に想いを提案できる人事制度があれば、誰もがフェアに働ける風土づくりにつながるのではないかと思います。改めて、メルカリさまは制度の目的がしっかりしており、自社の考え方を大事にされていることに共感しました。
矢崎:丸井グループは、5年ほど前(2016年)から「ウェルネス経営」の推進を掲げ、社員一人ひとりの心身の健康を大切にし、イキイキ働ける環境づくりを取り組んできました。
今年度は「Well-being経営」(=一人ひとりが心身ともに健康でエンゲージメント高く働ける状態)を推進しておりますが、なぜ今、Well-beingなのでしょうか?
森久保:丸井グループのミッションは、すべての人が「しあわせ」を感じられるインクルーシブで豊かな社会を実現することであり、すべてのステークホルダーの「利益」と「しあわせ」の調和と拡大を目指しています。
丸井グループのステークホルダーの特徴は、「将来世代」がある点です。この「将来世代」は、サステナビリティやダイバーシティなどの新しい価値観をもつネイティブ世代です。ミッションの実現には、多様性を認めること。社内においてもそういった風土づくりが大事だと考えています。
一人ひとりが個性や強みを発揮し、イキイキ働きながら活力あふれる状態を目指すためにもwell-beingの推進が必要であると思います。
矢崎:Well-being推進プロジェクトメンバーは、そこに共感して参加していますよね。
私自身、Well-beingをもっと学びたい、周囲や会社にアウトプットしたいという気持ちで参加しています。様々な事業所の人が垣根を越えて集まる「グループ横断」のプロジェクトだから、普段関わらない事業所の人たちと一緒になってWell-beingについて考え、そこでの気づきをそれぞれの職場に持ち帰り、輪が広がっている実感があります。
大浦:私も、Well-being推進に共感し、想いを持ってプロジェクトに参加しています。
目の前の仕事との向き合い方も変化していると感じています。
大山:すばらしいですね。自分たちの想いを形にするとか、想いを持った人が携わることって大事だと改めて感じました。
そういう動きがより、広がっていくといいですね。
矢崎:続いて、メルカリさまにとっての「Well-being」についてお聞かせいただけますか?
望月:メルカリは、新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創るというミッションの実現に向け、多様性のある組織作りを行っています。ミッション実現のためには、社員の体験をより良くすること、一人ひとりが「より良い状態」で仕事をすること、つまりWell-beingであることが必要だと考えております。
メルシーボックスによって福利厚生は整ってきているのではないかと思います。これからは長く成果を出すために、一人ひとりがいきいき働くこと、チャレンジに対して「レディ」の状態を維持できるような環境づくりに取り組んでいきます。
大山:メルカリはこれまで、経営の強い意志によって、マイナスからゼロにするダウンサイドのカバーについてひたむきに取り組んできました。これからは、その先のゼロからプラスのところに取り組むフェーズに入ってきたのかもしれません。人事としても、メルカリが社員にとって、心地よく働ける場所であり、パフォーマンスが発揮できる場所であり続けたいと思っています。
メルカリはミッション達成のために3つのバリューと4つのファンデーションを掲げています。そのファンデーションの一つが「Well-being for Performance」です。
例えば、世界に挑戦しているトップアスリートは「最高のパフォーマンスを出すためにはどうしたらいいのか」を常に考え、自身のWell-beingを保つことに日々取り組んでいます。メルカリで働く私たちも同様に、自分自身を大切にすることが、日々のパフォーマンス発揮にも繋がっているのではないかと考えます。
たとえばメルカリには多様な働き方を尊重した新たなワークスタイル「YOUR CHOICE」という制度があります。
これは、「あなたがベストな状態で働ける場所をあなた自身で選ぶことができる(※)」という制度で、自分自身で選択するということが、「Well-being for Performance」の考えと共通しています。
(※)セキュリティ要件など業務上必要な場合は、オフィス出社とする場合もあります
森久保:自分の人生や働き方を選択肢の中から選ぶためには、その選択肢は平等でなければいけないし、寛容でなければならないですよね。
例えば、「自宅でのテレワークよりの会社へ出勤した方が偉い!」みたいな考えは本質からずれているし。一人ひとり違うからこそ、「これをしたら必ずWell-beingが高まる」とは決めつけてはならないと思います。メルカリさまのお話から、一人ひとりがイキイキとしてベストな力を発揮するためには、いくつかの選択肢から自己決定していく環境をつくっていくことが大切だと感じました。
矢崎:大浦さんは丸井で働く社員として、Well-being経営をどう感じますか?
大浦:私自身、働く時間を豊かにしたいと考えているのでWell-beingの推進に共感しています。
私の場合、「どうして100%の力で働けない」ときがあります。子宮内膜症のため、毎月ではないですが生理痛が重く、仕事がまともにできないときがあります。
新社員の頃は症状が特に酷かったのですが、休むこと=悪という感覚で無理して働き、症状が悪化したことで周りの方に余計に迷惑をかけてしまうことがありました。当時は自己嫌悪になってしまい「私はこれから先も迷惑をかけ続けるから、活躍する資格はない」と思っていました。でもいつしか、その考えこそがチームや会社にとって良くないと感じるようになりました。
それからクリニックに通い、自身の病状を詳しく知ることができました。ダウンサイドを自覚することで、心身の状態によって働く場所や時間を工夫するようになりましたし、上司に自ら相談できるようになりました。理解してくれる周囲に感謝しながら、前向きな気持ちでパフォーマンスを発揮したいと考えています。
Well-beingな状態で働くために、一人ひとりがどういった選択をしたら自分はイキイキ働けるだろうと考え、行動することが大切だと思います。
大山:チームで成果を出すということはメルカリでも重要だと考えています。
ワークスタイルシンクという取り組みがあるのですが、自分にとって心地よい働き方やコミュニケーション方法について、チーム内でシェアをするというものです。非常にオープンでありながらも、自分のことをどこまで話すかは自由であり、「この項目は答えたくない」もアリという尊重がベースになっています。たとえば1つの項目例を上げると、「WEB会議は顔出しした方が安心する派?しない派?」とか。個人の価値観をシェアしたうえで、必要があればチームでサポートし合おうというメッセージでもあります。
矢崎:本日はありがとうございました。
今回の対話のようにWell-beingについて自身の考えを深めていくと、ポジティブな気持ちなりますし、ネガティブに感じていたこともポジティブに変換して考えられるようになると思います。
また、このWell-being推進プロジェクトの活動を通して、自分のため、人のためになることがわかっていたら、壁にぶつかったときも、考え方や取り組み方は大きく変わるということを実感しています。
皆さまからもお一人ずつ、本日の感想をいただけますか?
大浦:今回の対話で気づきや学びがたくさんありました。Well-beingについて理解が深まりましたし、メルカリさまの新たな取り組みについても勉強になりました。
これは、私自身が最近実感していることなのですが、自分の成長やしあわせのために仕事をしたら、周囲や会社、社会のために繋がっていくのかな、と。人生の1/3は仕事をしている時間だと聞いたことがあるので、日々の仕事に納得感や充実感をもって、Well-beingな状態で働きたいと思います。
森久保:本日はありがとうございました。今回の対話で感じたことが数多くありました。
メルカリさまと丸井グループは文化が異なる企業だがシンクロする部分がたくさんあり、
メルカリさまの考え方やその取り組みに大変共感しました。
一人ひとりがWell-beingな状態で働くためには、上位職の考え方や働き方が重要だと改めて思いました。
熱量のある社員がいても、出会った上司がそういった考えに理解をしていなければ、その社員の大事な想いは実現できません。
上に立つ立場として、そのような理解や寄り添いを大切にし、また自分自身がWell-beingな状態で常に仲間に接していくよう心掛けたいと思います。ありがとうございました。
大山:皆さんとWell-beingについて対話できて大変楽しかったです。
私がお話していて一番感じたことは、自分も他者も状況も変わり続けるので、その都度自分にとってのWell-beingも変わるのではないかということです。
状況が変わるというのは、例えばメルカリは、コロナ禍で介護や育児の特別休暇が上限なしで取得できる制度を期間限定で導入した事例が挙げられるかと思います。
人事として社員に寄り添い続けるためには、自分の変化や世の中の変化を把握する、学び続けることが欠かせないのだと思っています。
個人としても、今日の私と明日の私はきっと違うので、自分にとってのWell-beingは何で、それをどう保つかを日々考えアップデートしていかなければならないと、今回の対話で改めて感じました。
望月:今回の対話を通して、自己解放できる組織にしていきたいと改めて思いました。
とにもかくにもまずは自分を大切にすること。これを各人がやらない限り、組織のWell-being向上は始まらないと思います。
もともと、自分を良い状態に整えて、良い組織の中で働き、仕事を通しての貢献実感を…というサイクルを人事制度を通して実現していきたいと考えてきましたが、この順番の重要性を改めて感じた機会になりました。
自分を大切に…まずは私自身、今日は早く帰ってゆっくり眠りたいと思います!(笑)