2022/03/18
丸井グループでは、Well-being推進プロジェクトメンバーを中心に、だれもが「しあわせ」を実感できる新しい“当たり前”の創造のために、女性の健康・活躍を推進するイベント「Well-being Village~わたしを、愛そう~」を開催しております。今回は、株式会社エムティーアイ ルナルナ事業部長の日根 麻綾氏とフェムテックに関する活動をしているお茶の水女子大学の学生団体『まめでんき』の小野 日菜子氏をお招きし、新しい生理との向き合い方について語り合います。
(写真左から)
鬼束 みなみ
株式会社エポスカード
営業本部
小野 日菜子氏
お茶の水女子大学
学生団体まめでんき
日根 麻綾氏
株式会社エムティーアイ執行役員
ルナルナ事業部 事業部長
花守 俊憲
株式会社エイムクリエイツ
空間プロデュース事業本部
小口 まほこ
株式会社丸井グループ
ウェルネス推進部
産業医
鬼束:本日はお時間いただき、ありがとうございます。
丸井グループでは、Well-being推進プロジェクトメンバーを中心に、だれもが「しあわせ」を実感できる新しい“当たり前”の創造のために、女性の健康・活躍を推進するイベント「Well-being Village~わたしを、愛そう~」を開催しております。
まずはじめに、月経(以下、生理)に関わる個人の問題・課題について、お伺いできればと思います。ココロやカラダの不調だけでなく、生理に対する情報不足や、毎月の生理用品の出費による経済的な問題等様々な課題があると考えています。
皆さん、生理にまつわる悩みや課題に感じていること等ございますか?
小野:生理中だけでなく、排卵のときも体調が悪くなるので、1カ月のうち排卵期・生理前の黄体期・生理中の月経期と1カ月のうち3週間体調が悪くなってしまいます。そうするとやりたいこともやれない、自分が全力を出せていないということに対する悔しさもあり、なんで生理のせいでほとんど無駄になるのか、自分のせいでないのに自分のせいになるのが嫌でした。あと、デリケートゾーンが凄く不快で、なんでこんな不快な思いをしながら洋服を着て、仕事や学校にいかなきゃいけないのか…そんなところも気になっています。
▼生理の周期
日根:私個人は生理痛が少しあるくらいで、自分自身あまり生理に対して悩んだことはありませんでした。しかし、ルナルナの仕事を始めて学んでいくうちに世の中には小野さんがおっしゃったように1カ月のうち3週間体調悪い人がいるのだと知りました。「同じ女性でも、こうも違うのか、これはなんか物凄く理不尽だぞ」と思ったのは凄く印象的で、この理不尽さは必ず是正していくべき社会の課題であると感じています。
私はたまたまラッキーで多くの女性が感じていると言われる、生理前に起こる不調、月経前症候群(以下、PMS)の症状も感じることがなかったのですが、産後の生理から急にPMSの症状を感じ始めました。上の子のイヤイヤ期とはじめて経験するPMS、新規事業の立ち上げ、夫の出張続き等様々なことが丁度重なってしまい、何故か分からないけど泣いてしまうということがあり、これがPMSだと気付くのに3周期くらいかかってしまいました。PMSの知識もある、生理日管理ももちろんしているにも関わらず、自分が生理に関する不調を経験したことがなかったこともあり、身体や心に起こった変化が生理周期(ホルモンバランスの変化)に関連していると分かるまで多くの時間がかかりました。これだけ知識はあっても当事者になってはじめて分かることがあるなと学びましたね。
また、授乳中・次の妊娠希望の期間はピルなどホルモン剤に頼ることもできずお手上げ、というのが辛いなと感じています。少しずつピルやオンライン診療等、対処法への認知・理解が出てきましたが、このような方は多いのではないかと思います。
鬼束:私は、生理と仕事の両立だけでも精一杯なので、それに子育ても家事も加わるとなると想像を絶する辛さです…。
小口先生、そもそもこんなに私たちを苦しめている生理ってどういう仕組みで起こるのでしょうか?
小口:生理は、約1カ月の周期で子宮内膜が出血をともなってはがれ落ち、体外へ排出されることで起こります。女性のカラダの仕組みとして、月に1回、排卵があり、それに伴い子宮内膜が厚くなります。卵子が受精しなかった場合は準備した子宮内膜がいらなくなり、はがれて子宮外に排出されます。その時にどうしても痛みがあったり、その前後で不調が起きたりしてしまいます。しかもそれが、必ず月に1回、生理が始まるのが早い方だと12歳頃から閉経になる50歳前後まで続きます。
産業医として働く中で「仕事に対するパフォーマンスが出せない、しかもそれが周囲に理解してもらえない」という話を耳にすることがあります。こういった生理に対する問題や課題を色々な方に理解頂き、お互いにサポートし合える環境づくりができるといいなと思っています。
花守:今、プロジェクトとして関わっているので、生理にまつわる知識は増えているのですが、皆さんのお話を伺ってみて、まだまだ現状を知らないことが個人としての課題だと感じました。
男性の中で生理について知っているという人でも現状を理解している人がどれだけいるのだろうかと思いました。
改めて女性の抱える生理の問題や課題の現状について知っていかなければならないなと気づかされました。
鬼束:次にPMSの認知・理解についてお伺いできればと思います。PMSとは、Premenstrual Syndromeの略で、その日本語訳が「月経前症候群」です。生理前の3~10日の間に続く精神的、身体的な症状で、生理が始まるとともに症状がおさまったり、なくなったりするものを指します。花守さんPMSって聞いたことはありますか?
花守:正直、プロジェクトが始まるまでは聞いたことがなかったです。それまでは生理しか知らなかったので、生理の期間中だけでなく、その前後に辛い症状があることを初めて知りました。時代なのかもしれないのですが、私が学生だった時には保健の授業は男女分かれていたので、そもそもそこまで深く生理や女性の健康について学ぶ機会がなかったですね。
鬼束:私もPMSという言葉を知ったのは最近なので、男性でPMSを知っている方はまだまだ少ないのではないかと思います。小口先生、改めてPMSってどのような症状があるのでしょうか。
小口:先ほど鬼束さんよりお話があった通り、生理前の黄体期に起こる不快な症状がPMSです。症状は腹痛、腰痛、頭痛、眠気、お腹や胸の張りのような身体の症状から、イライラや抑うつなど精神的な不調が現れることもあります。こういった症状がPMSによる症状とは気づかずに「どうしてこんなに不安定になってしまうのだろう、イライラしてしまうのだろう」と悩んでしまう方も多いのではないかと思います。
日根:実際にルナルナで実施したアンケートでは、約94%もの方がこれまでに何らかのPMSの症状を感じたことがあると回答されています。さらに、症状を感じたと回答した方の8割強の方が日常生活にも影響が出ているというような回答があり、多くの方が辛い症状を感じていらっしゃることに改めて驚きました。
生理中と同じように生理前の辛さも同じくらい多くの女性が感じていて、生理中の痛みや不快な症状などの課題だけ解決したらいい話ではないなと感じます。女性の中でもPMSを知らない人は多く、ルナルナのメンバーでも「ルナルナの仕事に携わるようになってから初めてPMSの存在を知った」という人もいます。
少し古い調査結果ですが、2013年にルナルナで取ったアンケートでは、PMSの症状を感じたことある人は9割以上いるにも関わらず、PMSとは何か分かっている人は6割ぐらいという調査結果もありました。
PMSの存在を知らず、原因がわからないことにより、振り回されて、自分が弱いせいなのかなって思ってしまう。そのような悪循環が起こっているのかと考えると、ますます悪いやつだなという憎たらしい感じがしてきますね。
小野:私自身も高校生の時には生理前の辛さがPMSであるという理解をしていなくて、なんとなく具合が悪いけれど、黙って耐えようと思っていました。
逆にPMSを知ってからは、私のことなのに「ホルモンのせいで憂鬱な気持ちになっている」と決めつけられてしまったら、今度はじゃあこの気持ちは誰の気持ちなんだろうって思ってしまいました。悲しい気持ちとか憂鬱な気持ちって自分の素直な感情として受け入れたいのに、ホルモンのせいと言われてしまうと、じゃあこの気持ちは私の気持ちじゃないの?と思ってしまって、落ち込んでいる自分を大事にしたいっていう気持ちが削がれてしまいます。
鬼束:お話をお伺いする中で、改めて生理って個人として抱える課題なのではなく、社会全体の課題だと感じています。ルナルナさまは、生理にまつわる女性のカラダとココロについての調査「FEMCATION白書」を公開されています。こちらのFEMCATION白書を出された経緯等についてお伺いできますでしょうか。
日根:2020年にルナルナのサービスが20周年を迎え、せっかく20周年だからPRを含めて何かちょっと新しい取り組みをしようというのをきっかけに、じゃあ今、「世の中的に何が求められていて、課題になっているのだろう?」「それに対して私たちがやるべきことをミッション・ビジョン・バリューから紐解いていくとなんだろう」という話をする中から出てきました。
ルナルナはこれまで、女性の健康課題に対してテクノロジーを使ったサービスを世の中に出してきたのですが、「そもそも当事者としての知識がないと利用に至らないのではないか?」「世の中にある女性の健康に対する偏見を無くすために、正しい理解を広めていくことが必要なのではないか?」と考えて、女性のカラダのこと、ココロのことについて啓発活動を行う「FEMCATION※1」というプロジェクトをスタートしました。
当事者である女性自身による理解は進んできたと感じる一方で、男性の理解はどうなのか?というのをFEMCATIONの活動の中で疑問に持ったところから、生理やホルモンバランスの変化に対する男性の意識調査を行ったのが「FEMCATION白書」です。
生理やPMSなど女性の辛さがその女性個人の問題であると留まっている限り世の中は変わらない、社会の半分を構成する女性が自身のパフォーマンスをいつも通りに発揮できない時期があることについて、男女関係なく社会全体で考えていけるとより良い世の中になるのではないかと考えています。
鬼束:男性に向けて生理やホルモンバランスについての意識調査を行うのって画期的ですね!実際に男性の生理やPMSについての意識ってどのようなものでしたか?
小口:経済産業省の調査でも女性従業員の約5割が女性特有の健康課題などにより職場で困った経験があると回答しています。そのうちの多くが月痛(72%)や月経前症候群(43%)によるものだそうです。
その他、ヘルスリテラシーの高い女性の方が仕事のパフォーマンスが高いという調査結果もあり、企業の生産性において女性の健康リテラシーが重要であるとも感じています。職場全体のヘルスリテラシーを上げるために、女性の健康や課題について情報発信していきたいと考えています。
小野:皆さんのお話にもあった通り、生理って個人だけでなく社会の課題でもあると感じており、その一つとして、災害時における生理対処が挙げられると考えています。
私は卒業研究のテーマを災害時における生理対処にしたのですが、災害時に生理がきて苦労したというデータが非常に多かったです。
避難所の責任者や役所の責任者の方が皆さん男性なので、生理について思い至ることが難しく、生理用品が一人一枚しか配布されなかったり、必要になったらその都度に取りに行かなければならなかったりしたそうです。そういった課題をどうすれば解決できるのかということをテーマに卒論を書いたのですが、社会が生理を見えないままにしておくことによって様々な問題を引き起こしていると考えています。
通常時できないことは非常時には当然できないからこそ、日頃から生理や女性の健康についての認知・理解を広めていくことが大事だなと感じています。
※1:FEMCATION:「FEMALE(女性)」と「EDUCATION(教育)」を掛け合わせた造語。複雑かつ多様性のある女性のカラダとココロについて正しく学ぶ機会を創出し、年齢や性別を問わず、社会全体で寄り添いあえる環境を目指すルナルナが提供する理解浸透プロジェクト。
鬼束:生理を含めた女性の健康課題への新しい解決策として、女性の「Female」と「テクノロジー」を掛け合わせた「フェムテック」が注目されつつあります。いち早くフェムテックに取り組まれていらっしゃるルナルナ様のサービスについて日根様にお伺いできればと思います。ルナルナ様のスマートフォンを通じた新しい生理との向き合い方についてお教えいただけますでしょうか?
日根:ルナルナのサービスは生理日管理がベースとしてあるので、生理周期から、その周期の中でどういった体調変化が起こるか、を記録していただくことで、ご自身の身体のリズムを見える化し、把握をすることができます。自分のリズムが分かってきた次の段階として、生理やPMS等の正しいリテラシーを身に着けていただくために、コンテンツの提供等も行っています。自分のリズムと一般的な知識を掛け合わせることで、それぞれ自分に合った対処法が分かってくるので、まずは自分のリズムを知るところから始めていただければと思います。
また、ビックデータの解析にも力を入れており、たくさんの利用者からお預かりした生理周期や排卵日等のデータを元に独自の排卵日のアルゴリズムを作り、妊活サポートに繋げています。これまでは入力したデータは利用者自身しか見ていなかったのですが、婦人科の先生も同じデータを参照していただけるようにすることで、これまで紙に書き写していた大変な作業がなくなり、スムーズな診療につなげる「ルナルナ メディコ」というサービスもあります。約40年という長い生理人生の中で、自分のリズムを知っていただき、必要な時には婦人科医療にすぐアクセスできる、日常の中にもっと自然に婦人科医療の恩恵が入ってくる、そんな世界を作ることを私たちは目指しています。
小口:婦人科と言うと妊娠や病気になった時に行くところと思っている人は多いと思います。でも実は日頃の生理や健康について気軽に悩みを相談できる場所です。少しでも気になることあったら婦人科に相談してもらえるといいと思います。例えば、生理前や生理中に、いらいら・頭痛・腹痛がひどいとか、ナプキンの交換が30分おきに必要とか、生理にレバーのような塊が混じっているとか、そんな時に日頃から相談できるかかりつけの婦人科を見つけておくと安心です。
小野:今までは、生理って一回一回解決するものでした。薬を飲んで痛みが収まる、今回の生理よく頑張りました、みたいな。ただ、生理のその先の、あらゆる病気になる可能性や妊娠したい・したくない等、様々なライフプランの選択肢につながっていくんだな。と思うと、単体での解決ではなくて、長い目で見て、選択肢を選ぶところまで考えなきゃいけないんだなって思えてきます。じゃあ、どうやってその選択肢をみんなが選べるようにするか、というのが大きな課題だなと思っています。
私たちはまめでんきの活動をする中で、様々なフェムテックの商品を見て、自分で買ってみたりするんですけど、中には2万円ぐらいするものもあって、学生のお財布にはきつすぎるな、というのが正直な感想です。せっかく見つけたワクワクする選択肢を選べない人がたくさんいるというところが課題だなって思っているので、生理へのポジティブなアプローチとして出来上がってきているフェムテックを、誰もが自由に選べるものに変えていければいいなと感じています。
花守:こういった生の声を聞く機会が今までなかったので、生理やPMSは社会の課題であるという実感がますます強まりました。
人口減少はどんどん進んでいて、会社では女性の活躍が求められる、でも家庭では家事も求められる、出産もして、子育てもして…と考えると、仕事をしている男性の負担ってたいしたことないんじゃないかなと思いました。昔ながらの考え方として、男はお金を稼ぐだけやっていればいいわけでもないんだなと改めて気づかされました。社会の仕組みとして女性の健康に対して男性がもっと関わっていけるようすることは解決していかなくてはならない課題だと改めて思います。
鬼束:皆さま本日はお忙しい中お時間頂きまして、ありがとうございました。生理やPMS等女性の健康課題についてお話させていただき、とても楽しいお時間を過ごさせていただきました。本日お話させていただいたことをもとにプロジェクト活動等に活かしていきたいと思います。皆さま、最後に一言ずつ頂戴してもよろしいでしょうか。
日根:丸井グループの皆さんがWell-beingの取組みに、男性も女性も関係なく取り組まれていること、そしてマイナスをゼロではなくて、ゼロをプラスにするために取り組まれていることが、すばらしいなとお話を伺い思いました。
また、その中で女性の健康について、取り上げていただいたこともすごく嬉しいですし、今日お話を一緒にさせていただく中で、生理やPMSなどの女性の健康課題が、個人の課題ではなく社会の課題だとお話ができたことも嬉しく思います。
丸井さんのような企業がこういった活動をされることで、きっと一個人の意識が変わっていくのではないかと考えているので、本当に期待しかないです。また、いろいろとお話聞かせてください。ありがとうございました。
小野:私は今まで大学で学ぶにとどまっていたのですが、いろんな企業の方が女性の健康のために新しいサービスを開発されていたり、社員の方に向けて研修をされていたりするというのを聞いて、社会の先輩方はいろいろ工夫なさっているんだなと感じました。これから社会に出るにあたって気持ちが軽くなり、助けてもらえる手段があるのだととても安心できました。
それからやはり働く方は皆さん忙しいと思いますし、学生もみんな勉強していたり、バイトしたり、他にも皆さん各々の理由で忙しいと思うので、忙しい日々の中で、お洋服を選ぶとか食べたいものを選ぶぐらいの感覚で、サラッと当たり前に生理に関して選択できるように、社会が変化していけたらいいなと思いました。今回は、このような機会をくださり、ありがとうございます。
花守:本日はお時間いただき、ありがとうございました。お話にもありました通り、生理やPMSは社会としてとらえていかなければならない課題であると改めて感じました。生理との新しい向き合い方として、未来が明るくなるようなことが始まっている。それに対して、一人の男性として何か自分にできることから関わっていければと強く思います。いろんなお話を伺う中で、自分はどのように向き合っていけばよいのか考えるよいきっかけとなりました。ありがとうございました。
小口:今日は本当にありがとうございました。ルナルナ様で女性のカラダとココロについて、様々なデータを解析されているというお話を伺い、とてもすばらしい取組みであると思いました。
また、小野様のお話を伺い、自身の健康について意識をされ、実際に行動されているからこそ、こんなにもイキイキとされているのだと思います。こういった方が増えていくと仕事のパフォーマンスも上がり、さらにしあわせにつながっていくのではないかと感じました。
女性も男性も女性の健康について理解を深めていき、かつ男性の健康についても皆が興味を持つ事で、男女関係なくお互いに助け合える職場や社会にしていきたいと思いました。ありがとうございました。